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ピンチをチャンスに!日本の高齢者が観光資源となる

 秦の始皇帝は、不老不死の霊薬を求めて家臣を旅に出した。

 二千年以上の昔、史記にある一節だ。帝の命を受けた徐福が向かったのは東方の三神山、それが命がけの旅であったことは容易に想像がつく。古今東西、不老長寿が珍重されることに変わりはない。

 時を経て、今や我が国は世界一の長寿国家となった。
奇跡といわれる戦後復興を遂げ、先進国の仲間入りをした一方で、超高齢者社会のトップランナーにいる。

 織田信長は人生五十年と謡ったが、戦国時代から終戦までの500年位は人生五十年社会が続いていた。ところが、戦後わずか60年余りで日本人は30才以上も寿命が延びたというから驚く。

 これがどれほど凄い話かと言えば、アフリカで見つかった2万年前の古代人も紀元前後の縄文、弥生人も平均寿命は20才前というから、30年の寿命を延ばすには少なくとも数万年かかることになる。それをわずか半世紀の間に達成してしまったのだ。

 少子高齢化が進む中、外国人の訪日旅行であるインバウンド客の誘致に期待が集まっている。

 これまで内需を支えてきた国内旅行の需要が、人口減少により期待できなくなっているからだ。

 欧米から極東と呼ばれ、東洋の果てに位置する日本は、古くから神秘の国とされてきた。緑豊かで自然も美しく、繊細な和食や人情厚いおもてなしの心を持つ国として、ジパング神話は今も色あせていない。近年、アニメや音楽、ファッションにおいても国境を越えるクロスカルチャーが進んでいる。日本の若者からは「かわいい」という世界語が生まれるほど、日本人のライフスタイルに憧れる外国人が少なくない。
インバウンド観光には、こうした他国では得られない魅力的なコンテンツが重要だろう。

 今医療ツーリズムが注目されているが、私は超高齢者社会そのものをアピールできないものか感じている。

 超高齢者社会は、日本の豊かさの証しであり、これを魅力ととらえれば、高齢者も観光素材になりうる。

 観光が国の光をみるというなら、こうした長寿国家の実現こそ、国の光を見せることではないだろうか。始皇帝でさえ得ることができなかった健康長寿が日本には当たり前にあるという事実だ。

 日本では50年前に国民皆保険制度など優れた医療システムが導入され、国民ならだれでも衛生的で優れた医療サービスが受けられるようになった。また、栄養価の高い食料が誰でも容易に入手できる豊かな社会を築き上げてきた。戦後は平和な時代が訪れ、経済成長の結果、過酷な労働もなくなったことが健康寿命を支えたことも間違いない。

 一方で少子高齢化が、様々な課題を社会に投げかけているのも事実だ。年金、医療、介護、多くは高齢者とのかかわりが大きい。これから約30年で日本は超高齢者社会のピークを迎えることになるが、経済再生とあわせて海外の専門家たちも我々がここをどう切り抜けるのかに高い関心を寄せている。

 欧米でも認知症患者の増加は今や国家的危機との認識が広まっており、イギリスでは2009年に国家認知症戦略を策定したほどだ。

 アジア目をむければ、さらに切実な状況が迫っている。韓国は日本以上の速さで超高齢者社会に突入し、中国はひとりっ子政策のひずみが急速な高齢化をもたらしている。インドにもその影響が予測され、これから人口が多い国々が次々と高齢者社会へと日本を後追いしてくることになる。

 これは人口動態の変化というすでに決まった未来である。

 こうしたアジア諸国の中には、社会福祉という概念のない国もある。

 そこで日本の社会保障制度や優れたヘルスケアの産業モデルが、よい手本となる可能性は大きい。かつて日本から多くの福祉視察団が欧米の自治体に出かけたが、これからは世界中から日本へやって来る時代だ。

 日本は欧米に学んだことで、この十数年で施設や住宅などハードの整備、改善が進み、新設されるものには福祉先進国のそれを越えた感さえある。財源など社会保障制度の背景が違う中で、視察による学びと自らの努力によって、よりよいシステムができつつあり、日本のような低負担の制度設計が参考になるのではないかと思う。

 また、医療、介護の周辺には様々な産業の芽があり、今後、経済成長のけん引役としての期待も高まる。

 特に介護保険制度は、開始から10年余りの歳月を経て、様々な知見が蓄積されてきた。
福祉機器や介護ロボットに限らず、産学官が共同した多職種連携も模索され、少子高齢化がもたらす様々な課題を地域が一体となって乗り越えようとしている。こうした日本の経験を知ることは貴重なことだろう。

 すでに高齢化率が40%を越えて心配される集落も少なくないが、そこに暮らす人々は結構楽しくしていたりする。限られた予算で地方自治体は、地域経営をしなければならない大変な時代だが、ピンチはチャンスで発想を変えると様々な地域の可能性も見えてくる。

 千葉県柏市は、産官学が共同して超高齢者社会に対応する街づくりに取り組んでいる。
バリアフリーの住まいづくりや地域医療に取り組むだけでなく、働く場、学びの場、それを支えるICT、グリーンエネルギーの環境システム、交通アクセスなど、さまざまな最新技術を集約させた壮大な社会実験である。勤勉な日本の高齢者にあった生きがい就労という新たな労働力も生み出している。

 こうした取り組みから住民満足度を高めなければ、これからの自治体経営は成り立たないという危機感もあり、これは高齢者社会を迎える世界共通の課題だと思う。

 これらの解決には、部分的な取り組みでは持続できない。先の長寿要因にあるように生活習慣やライフスタイルそのものが健康と密接な関係があるからだ。

 暮らしを取り巻く自然環境や生活を支えるエネルギーの問題など、環境福祉を一体としなければ健康長寿への道は開けない。

 したがって単なる介護施設の見学や社会保障制度の勉強だけでは視察メニューが足りない。

 すぐれた医療機器などには、先端技術も長寿に役立っているが、福祉サービスは究極のヒューマンサービスといえる。介護が必要となっても幸せに暮らすことができる要因がどこにあるのか、どんな人的資源を必要とするのか。つまり、地域が取り組むまちづくり、人づくりそのものが外国人には視察対象であり、介護が必要となっても希望を持ち、元気に暮らす人々が多い町は、そのものがショーケースとなる。

 地域には人の営み、生々しい現実社会が存在する。だが、それらすべてが他にない視察メニューになる。こうした取り組みに熱心な地域は少なくない。ただ自身が気づいていないだけだと思う。

 訪日観光の中で福祉視察旅行が、民間外交の一翼を担えるのは関係者にとっても誇らしいことだろう。

 政府は観光素材にとどまらず、こうした他国にない優れた日本の地域が持つ長所をセールスして欲しいと思う。

 受け入れ施設の調整など、細かな合意は必要かもしれないが、それは何とでもなる。日本の福祉システムに触れた人が帰国した時に、その周囲が少しでも幸せになるような旅にできたら素敵だ。

 かつて日本人が欧米にその手本を求めたように、今度は日本が世界の手本となることを地方の人にも知ってほしいと思う。

 徐福が向かった海に浮かぶ東方三神山の一つとは日本のこと、今もその跡が全国各地に残されている。

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コメント (1)

新年を迎え新たな目標を改めて確信できました。そしてとても感動しましたので投稿させて頂きました。
歴史に、自然に、そして地域の営みに学ぶと共に様々な課題がそこに在る、ということにみんなに気づいてほしいし自分自身にとっても課題が鮮明になってきた感じがします。
今年はまた、新たな事にチャレンジしますが、このコーナーで時々刺激を受けながら気持ちが萎えないよう前に進みたい!!・・・と思った仕事始めの日でした。

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Profile

篠塚恭一(しのづか・きょういち )

-----<経歴>-----

1961年:千葉市生れ。
1991年:(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。
1995年:超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。
2006年:内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。
現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。

BookMarks

あ・える倶楽部
http://www.aelclub.com/

-----<著書>-----


介護旅行にでかけませんか──トラベルヘルパーがおしえる旅の夢のかなえかた(講談社)

問診による経営診断のすすめ方(共著)

大人の脳活性訓練ガイド(入門編)監修

トラベルヘルパー養成講座・教本
 
介護旅行でいきましょう(時事通信・連載)
 
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