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大学に眠るガイガーカウンター──直売所コミュニティが"見えない不安"を解消する

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 3月11日の地震と津波、発生から3ヶ月たった今もなお大きな脅威がある。それが東京電力福島第一原子力発電所から飛散した放射性物質だ。DAYSJAPANの広河隆一さんがいち早く現地に行き、携帯していたのが大気中の放射線量を測定する放射線測定器、ガイガーカウンターである。種類は様々で、安いものは5万円から、量販店や通信販売でも売り出している。
 震災後まもない3月下旬、茨城大学の高妻孝光(こうづま・たかみつ)教授は、大学が保有する放射線測定器をある場所へ持ち出し、無償で計測していた。その場所とは研究都市で有名なつくば市にある直売所「みずほの村市場」(以下、みずほ)である。みずほは高妻教授の協力を得て、直売所に出す野菜の放射線量を自主検査している。

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会場は直売所に隣接する加工所。茨城大の学生が助っ人に入って測定する

 みずほは国よりも厳しい基準を設けて一検体当たり10分程度かけて測定し、超えたものは店頭に並べない。文科省は今から9年も前の時点で「緊急時における放射性ヨウ素測定法」(pdf資料は→コチラ←)を取り決めており、みずほではそれに従い測定している。
 国内の大学にはほこりをかぶった放射線測定器がたくさんある。茨城大学でもガイガーカウンターと同部類のGM計数管を3台、シンチレーションサーベイメータを2台保有している。大学が研究用に持っているもので、今まで決して外部に持ち出すことはなかった。

★ 消費者に隠れた生産者の不安感 ★

 3月19日枝野官房長官が茨城県内のホウレンソウから食品衛生法の暫定基準値(2000ベクレル/kg)を超える1万5020ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたことを発表し、茨城県は各市町村と農協に「出荷制限」の要請を出した。

「消費者よりも不安なのは生産者だ」

「出荷制限」以降の出荷者の顔は青ざめていたとみずほの長谷川社長は言う。ホウレンソウはダメで横に植えられているキャベツやコマツナは大丈夫なのか、土壌の放射線量は危なくないのか、一方的な国からの出荷制限はいつ解除されるかもわからなかった。
「出荷制限」は一度出ると、たとえ線量がゼロであっても出荷制限解除されるまでに最低でも約1ヶ月の時間を費やす。さらに出荷できたとしても卸売市場で値段はつかない。出荷制限発表後の東京の大田市場では、ホウレンソウ以外の野菜ですら山積みにされ、卸値は下落した。(「ホウレンソウ取扱量、東京で半減 4県産出荷停止受け」朝日新聞2011.3.22)

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「政府は出荷制限すれば消費者は安心すると思ったのだろうが、それは大間違い」と長谷川社長

 自分自身で測定することが必要だと思った長谷川社長だが、JGAPなど外部機関での測定を依頼すれば、一検体当たり4時間程度の時間と約2万円の費用がかかり、コストが上がる。そんな時に高妻教授と偶然出会い、自主測定が実現できた。大学から測定器を持ち出すことは教授自身の気持ち次第だ。高妻教授はいまでは直売所での測定を研究の一環と位置づけ、学生が手伝いやすい環境にしている。
 みずほの自主測定の結果、みずほの基準値を超えた作物もあった。2.5ヘクタールで野菜を育てる女性農家はチヂミホウレンソウが基準値を超え、約30万円の損失が出た。「30万円の損失はきびしい。でもみずほの検査に出してなければ今後の作付け計画もたてられず不安だったでしょう」現在はサツマイモや落花生など次のシーズンの作物に取りかかっている。次の作付けができることは農家にとって安心して暮らせる大きな要素だ。

★ 疑問を共有するコミュニティを ★

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次第に落ち着きを取り戻していったみずほの店内

 政府が断片的な情報を出し、不安感は一気に広がり、みずほの売上は一時通常の半分になった。事故以来、政府は「市場に出回っているのは基準を超えていないものです」と野菜を食べながら話す光景は何度も放映された。しかし消費者の不安は解消されておらず、北関東、東北産の農水産物を避ける人はいまだに少なくない。
 みずほの公開測定会に参加した消費者の一人は「野菜は洗えば放射線量の数値が下がる、大根の葉には放射性物質が残りやすいなど、自分の目で数値を確認してようやく納得できた」"見えない不安"が取り除かれていった経緯を語った。

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店内には子どもがたくさん

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カゴに入ったニワトリ。店内には動物まで

 "見えない不安"をどうやって解消するか。食を通じたコミュニティに注目するのは阪神淡路大震災などの被災状況を調査してきた中村幸安(なかむら・こうあん)氏だ。「『どうしてこのホウレンソウだけ残留線量があるんだろう』『あ、生産者が違う、地域が違う』と共同で放射線量を測定すれば、疑問を共有してそこからまた新しい問題意識が芽生えます。都会のコミュニティに共通してるのは消費すること。小さなグループでもいいから共同で食べ物を消費し、問題意識を共有することに価値があります」と一人で問題を抱えるよりも共有することの価値を訴える。(了)

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みずほの動物たち

(文:上垣喜寛(《THE JOURNAL》編集部) 写真:高木あつ子 取材日:4月29日)

★ ★ ★ ★ ★

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 この記事は農文協の許可を得たダイジェスト記事です。「みずほの村市場」のくわしい取り組みのほか、菅野飯舘村長のインタビュー、この震災で活躍した各地域については最新号「季刊地域」(農文協)掲載されています。全国の書店で発売中です。

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本当になんて国家でしょう。民主党に官僚に私達の命を預ける約束をした覚えはありません。損害賠償が膨らんでも、結果は国民が払うのであって政治家、官僚の腹が痛むわけではない。それとも、自分たちが浪費するお金が減るので嫌がっているのでしょうか?
「鬼畜」と呼ぶべき人種でしょう。今回の災害で、国家、官僚、マスコミは国民から搾取するだけの存在だということが、全ての国民に理解されたのは唯一のプラスでした。 

「くさいものにフタ」というのは日本の諺なのでしょうかね。(それとも起源は中国?朝鮮?)
いずれにしても今の放射能汚染の対する態度は、まさにこれですね。フタをして見ないようにして怖がっている、と言ったらいいでしょうか。
事ここに至っては、ちゃんとフタを開けて、くさいものに対処すべきと思いますが、行政の指導(?)方向は、いつまでたってもフタを閉めっぱなしです。この直売所のように意識して放射能に対処する必要は、多分日本全国で必要だと思います。
放射能の生命体への影響、ということに関しては、絶対的にデータが少なく、今回の福島の事態で、世界は、日本がどうなるのか、大変注目しているはずです。(まあ人体実験の被験者になったようなものです。)これから日本で生活するということは、そういう覚悟を心の片隅にでも置いておく必要があるような気がします。

 「放射能の生命体への影響、ということに関しては、絶対的にデータが少なく」ということですが何を基準に絶対量がすくないのか?私もいろりろ調べてみると内部被ばくも含めて低い放射線での健康被害の資料は全くない。どなたか年間の被ばく量と健康被害についてわかる資料ありましたら教えて下さい。原発反対ありきでの根拠のない~の模様。~世界的な潮流などは止めて下さい。

ななしの経営者さん

私は医者ではありませんので、生命体、特に人体に対する放射能の影響、ということに関して正確な知識を持っている訳ではありません。ただ私は物理屋ですので、放射線そのものが引き起こす基本的な反応<物理屋の世界では素過程という言い方をします>はよく知っています。
放射線を浴びるとガンになる、という言い方をよく聞きますが、それをうそとは言いませんが、はなはだ不正確な表現です。(逆にガンの治療に放射線を使っているくらいです。)

素過程では何が起きるか、というと、原子の破壊、もしくは元素の変換です。放射線にも幾つか種類がありますが、そのどれも、原子の構成要素である原子核に直接作用し、それを分裂、もしくは別の状態にしてしまう、ということがおきます。あまりピンとこないかも知れませんが、こういう素過程が生命体になぜ問題になるのか、というと、生命体を作っている色々な原子が破壊される、もしくは元のものと違う元素に変換される、ということを通じて、あるときは細胞が破壊されたり、あるときは遺伝子が強制的に変更されたり、およそ考えられるいろいろな変更が、生命体に起こる<可能性>がある、ということです。食物の研究では、種にいろいろな放射線を当て、遺伝子を強制的に変更し(つまり突然変異を誘発させ)、新たな品種を作り出す、ということは、結構盛んに行われているはずです。ガンの治療では、ガン細胞に放射線を当て、その部分を破壊することでガンを治療している訳です。
ですから放射線が人体のどの部分に影響を与えるか、で症状が違って来るわけで、そういう意味では、放射線は今までの病気とはまったく違うメカニズムで人体に(普通は)害を及ぼすわけです。
もう一つ厄介なのは、上に述べた素過程は、理論的には確率過程だ、ということです。つまり確率的にしか現象を予見できない、ということです。ですから放射線に当たった場合にかならずこうなる、ということは言えません。ある意味<運>が良ければ何も起こらないし、運が悪ければどんな低線量の放射線でも何かが起きてしまう、ということもあるわけです。生命体を人体としますと、人体は何個の原子からできているのか正確には知りませんが、
(1)そのどれ(だけの部分)が放射線の影響を受けるか?
(2)放射線の影響を受けたとして、原子が破壊される確率は幾つか、または他の元素に変換される確率はいくつか、
ということが分からないと、放射線の人体への影響を確定させることは出来ません。
そういう意味で、放射線の人体への影響は、純粋に(確率論を解析するために必要な数学的道具である)統計に頼らざるを得ない訳です。つまり、基本的なメカニズムは分かっているが、それの及ぼす影響は、純粋に統計的に解析して行くしかないので、その意味でデータが少ない、と申し上げたのです。多分医学的に役に立つ放射線に関するデータというのは未だに得られていないと思います。(動物実験は盛んに行われていると思いますがその結果のうち、直ちに人体に対する影響に役立つという部分はそれほど多くは無いでしょう。)

私は出荷制限措置が誤りだったとは考えていません。既存の組織、市場やJAが、多様性のある組織であれば、自発的に対処できたであろうが、未だ多くの組織は、自らが思考できる体制でない。ローカルな人脈しかない。生産者は作ることに長けているが、販売することには長けていない。そうした意味で民間の活力(営業)が必要であると考えています。生産者の立場に立って思考できる経済力をどの様に担うのか、作る力だけでなく、いかに売るか、生産者の高齢問題と同様に営業力(箱物でなく人材)支援する体制作りも必要であると痛感しています。

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2009年11月、日刊工業新聞社

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