2012年9月 2日

インナーの論理(下)

 シリア国内にはまだ国際電話がかかる。だから、ほぼ数日おきに現地の友人たちと話している。首都でも、政府軍のヘリが機銃掃射だけではなく、ミサイルを撃ち始めた。夜間は銃声で眠れないという。内戦はだぶだぶと血の海を広げている。

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インナーの論理(上)

 ジャーナリストの山本美香さんがシリアで殺害されてから、ずっと心が泡立っていた。おそらく書けば、少なからずの人びとに叩かれるだろう。しかし、沈黙していては、そのうち訪ねるであろう「あの世」で彼女に会わせる顔がない。
 

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2011年12月31日

ダマスカスにて

日本ではもう大晦日ですね。5カ月ぶりの更新なんていうなめた真似をしてしまって、すっかり恐縮している田原です。いま、シリアの首都ダマスカスの宿でパソコンに向かっています。こちらは30日の夜。会社の正月勤務と引き換えに、休みを前倒しして因果で小さな旅の途上です。

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2011年7月15日

落とし前はこれからだ

 夏はとても苦手である。連日のこの暑さで、十代の終わりごろのいささか暗い思い出がよみがえった。

 新潟県は柏崎の海岸で、友人たちと真夏にテントを張ってキャンプをしたのだ。ところが、夜が明けるとテントの中は蒸し風呂状態で寝てられない。ご飯を炊こうにも風が強くて、米は生煮えと悲惨だった。キャンプは柏崎刈羽原発建設反対闘争の一環だった。まだ、あの美しい浜に原発はなかったのだが、その後、できた原発もいまや老朽化が問題になっている。時の経つのは本当に早い。

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2011年5月 2日

絶妙な落としどころ

お久しぶりです。ウサーマ・ビン=ラーディンが「殉教した」ので、ちょっとメモ書きです。
 この事件についての私の感想は「四方丸く収まった」。一年ちょっと前に書いた「アル=カーイダの衰退」の流れの延長線上です。わが国政府では想像もしがたい安保外交の「妙技」を見せつけられた思いです。
 

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2011年2月21日

ただのお知らせ

タイヘンごぶさたです。かつて、4年余暮らしていたカイロをぶらついてきました。報告の一部は2月21日付東京新聞「こちら特報部」の記事にもあるのですが、あらためてNPO法人「NPO研修情報センター」さんよりお招きを受け、ご報告させていただく機会をいただきました。下がイベントの概要です。

緊急シンポジウム「『エジプト革命』の日、カイロで見たもの」
2月25日金曜日午後6時半~9時

講師:田原牧(東京新聞元カイロ特派員、現・特報部記者)

資料代:1000円

日時:2月25日午後6時半~午後9時

場所:なかのゼロ学習室4(東京都中野区中野2-9-7、電03-5340-5000)
※JRまたは東京メトロ東西線の中野駅南口から徒歩8分

ご関心のある方は、お時間があれば、お立ち寄り下さい。なお、次号の月刊誌「世界」でも外事文書流出事件同様、短いですが、エジプトの激動について寄稿させていただく予定です。取り急ぎ、ご連絡まで。

2010年10月11日

底抜け脱線社会

 老人たちがたくさん亡くなった夏だった。久しく畳の上にさらされていた骨まで見つかった。ただでも夏が苦手な私は「勤め人」をこなすのに手いっぱいだったのだけど、更新をさぼっていた理由はそれだけではない。ニュースが速すぎるのだ。その速さに「考えて書く」ことがおっつかなかった。

 思えば、5月に沖縄・辺野古への「Uターン」があり、参院選があり、死刑執行が再開され、金賢姫が来日し...あたりで、政権交代にまつわる熱が冷めた。とりわけ、「金賢姫ショー」は醜態だった。担当大臣は国内世論の再喚起が狙いとか言っていたが、自らの解決能力の無さ(無能さ)を子どもだましの「ショー」で誤魔化そうという構図は見え見えで、どこが政権交代なのかと空を仰いだ。

 そのほかにも、大相撲スキャンダル、先の不明高齢者、崩壊前夜の検察など、ニュースは絶えない。どれもこれも、一昔前なら一つのネタで半年くらいは話題になりそうなテーマなのだが、そのクラスのニュースが絶え間なく飛び出してくる。「社会の底が抜けた」。いつしか、そう感じるようになった。

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2010年7月 8日

<番外編>反社会的な「事実」

 このところ、本業である「西方」分析ではなく、国内の身辺雑記めいた話が多くてゴメンナサイ。ついでに、あとひとつだけ気になっている話を手短に記しておきたい。大相撲スキャンダルである。何が気になっているのかというと、報道されている「情報」が杜撰なのだ。新聞記者になって「西方」に重点的に携わる前、私は無名な事件記者の一人だった。そのときの乏しい経験と最近得た情報から、一連の報道の危うさについて指摘しておきたい。

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2010年5月23日

センチメントの力

4月初めから気が晴れない。知人がさらわれたままなのだ。常岡浩介君。フリーランスの記者で、アフガニスタン北部で消息を絶った。彼は昨年もアフガンを訪れていて、帰国した際には「この不況でテレビも出版社も渋くて。ちっとも取材レポートが売れず、足が出っぱなしです」と苦笑していた。それでも、再び西へ向かった。散発的に不確実な情報が届くが、解放まで当分、時間がかかりそうな気配が漂う。
 彼の今回の渡航はタイミングが悪すぎた。アフガンと隣国パキスタンの情勢は、ここ1~2カ月、イランも絡んで激しく揺れ動いている。その最中、今月1日にはパキスタン生まれの米国人青年がニューヨークで車爆弾テロの未遂事件を起こした。事件の前に5カ月ほどペシャワールに滞在していたと報じられているが、特定の組織には属していないようだ。外来者ではなく、一介の米国市民が自国で「聖戦」に躍り出る。昨年暮れのパレスチナ系米国人軍医(ニダール・ハッサン)の乱射事件と同様、9・11事件を超える「国内の戦場」が開かれたのかもしれない。

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2010年5月 2日

「善良な市民」という壊れ方

 ごぶさたです。最近はこのブログで顔出ししているせいか、たまに街で声をかけられる。
 先日は東京・JR水道橋駅の改札口で見知らぬ男性に呼び止められた。あたかも仕事でもあるかのように「急いでいるのでスミマセン」と立ち去ってしまった。ごめんなさい。急いでいたのは事実だけど、仕事ではなくて、その日の行き先は後楽園ホール。「大日本プロレス」の大会を見に行ったのだ。お目当ては葛西純選手。マニア向けかもしれないが、日本屈指のデスマッチ・ファイターだ。
 平日、夕方の後楽園ホール。そこは外界と隔てられた「昭和っぽい」空気が広がる。仕事場から駆け込んできたネクタイ族も、少年少女たちも、OLさんも、ちょっと得体の知れない人も、会場に一歩入れば、肩書なんて関係ない。そして、この団体の選手たちは妙に礼儀正しく、命懸けでデスマッチの狂態を正気にこなしていく。

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Profile

田原 牧(たはら・まき)

-----<経歴>-----

1962年生まれ。
新聞記者。
87年に中日新聞社入社。
社会部を経て、95年にカイロ・アメリカン大学に語学留学。
その後、カイロ支局に勤務。
現在、東京新聞(中日新聞東京本社)特別報道部デスク。
同志社大学・一神教学際研究センター共同研究員。
日本アラブ協会発行「季刊アラブ」編集委員。

BookMarks

-----<著書>-----


『ほっとけよ。』
2006年8月、ユビキタスタジオ


『ネオコンとは何か』
2003年7月、世界書院


『イスラーム最前線』
2002年3月、河出書房新社

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