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オバマの挑戦

 オバマ大統領の2期目の就任演説に、アメリカの「伝統的価値観」に対する挑戦を感じた。議会との「ねじれ」でオバマ政権の2期目は厳しい政権運営が予想されるが、しかしオバマは共和党とは異なる「価値観」を打ち出す事で政権の総仕上げを考えているようだ。

 1期目のオバマ政権に立ちふさがったのは草の根保守の「ティーパーティ運動」だった。彼らは、リーマン・ショックで経営不振に陥った自動車産業や金融機関を救済し、国民皆保険制度を導入したオバマを「社会主義者」と非難し、財政赤字が将来世代の負担を増やすとして「小さな政府」を要求した。

 また「建国の父の思想に立ち戻るべきだ」と主張し、キリスト教の信仰に基く「伝統的価値観」を重視する中絶禁止や同性婚の反対を強く訴え、不法移民にも厳しい姿勢を見せた。この「ティーパーティ運動」が3年前の中間選挙で民主党を惨敗させ、オバマ政権は「ねじれ」に苦しむ事になった。

 昨年の大統領選挙でもオバマは獲得選挙人数では大勝したが、総得票数では僅差であった。共和党との接戦を制したのは移民、女性、同性愛者などの支持を獲得したためで、いわば「伝統的価値観」に対する「新しいアメリカ」を取り込む選挙戦術が功を奏したと言える。

 この選挙結果を意識したかのように、オバマは草の根保守が必ず言及する「建国の父の思想」から演説を始めた。そしてそれを「伝統的価値観」とは逆の方向に利用した。「アメリカの独立宣言はすべての人間に自由と平等の権利を与えている。それを現実にするために我々は終わりのない旅を続けている」と語り始めた。

 そして「建国の精神への忠誠は、新しい事に挑戦する事である」と言い、共和党の政策とは異なる考えを次々に打ち出したのである。いわく、「米国民は今日の世界の要求に単独では応えられない」と単独行動主義を否定し、「米国の繁栄は台頭する中間層の肩にかかっている」と格差社会を否定し、「高齢者や貧困層に対する社会保障制度の仕組みは我々を強くする」と福祉社会を肯定し、さらには産業界から反発される地球温暖化問題についても「将来世代を裏切らないために対応していく」と決意を示した。

 外交・安全保障問題では、「海外の危機に対処する能力を刷新していく」としながらも「絶え間なく戦争をする必要はない」、「他の国々との紛争を平和的に解決するよう試みる勇気を示そう」と戦争路線からの転換を表明した。

 そのうえでオバマは演説の最後に再び「終わりのない旅路」の課題に言及する。それは女性、人種、同性愛など様々な差別撤廃運動を継続し、銃規制社会を作る事への決意表明であった。それこそがアメリカ建国の理想を現実にしていく行動なのだとオバマは訴えた。

 18分と短いが、国論を二分する問題にあえて挑戦する演説で、共和党を支持するキリスト教保守派の「伝統的価値観」に真っ向から挑戦した。これに保守派がどう反応し、共和党が議会でどのような対応を見せるかはまだ不明だが、演説を聞くとアメリカの「価値観」を転換させる事が政権の仕上げだとオバマは考えているようだ。

 レーガン政権が種を播いたアメリカの保守主義はブッシュ政権時代に完成されたと言われる。ブッシュ政権は国連を軽視する単独行動主義でイラク戦争を強行したが、その時代に国民レベルでも「伝統的価値観」を信奉する「ティーパーティ運動」が生まれた。

 その草の根運動が中間選挙でオバマの民主党を惨敗させ、共和党支配の下院を誕生させた。ところが共和党が議会を握ると、草の根運動の批判が共和党の議会運営にも向かい始める。穏健派が極端な保守化に反発する事を共和党が怖れたからである。共和党は穏健派と草の根との融合を模索し、草の根では「真の保守とは何か」の論争が始まる。保守派の分裂が始まった。

 昨年末の大統領選挙でのオバマの勝利は保守派の分裂に助けられたとも言える。その状況を突いて「伝統的価値観」に代わるアメリカの「価値観」をオバマは2期目の就任演説で提示したのではないか。そこには自らの政権の後、民主党政権を引き続き継続させる狙いがあるようにも見える。

 その狙いが成功すれば初の黒人大統領オバマのレガシーは完成するが、国内的には根強い反発が出てくることも予想され、「ねじれ」議会への対応や、混とんとする国際情勢への対応と共に、今後のアメリカ政治の展開は要注意である。

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コメント (1)

田中 様

現行体制と新しい体制は、時代を超えて続いている人間の存在を問う基本的な価値観の問いなのでしょうか。

民主主義の成熟した国においては、極端から極端に切り替わることなど期待できるわけもなく、徐々に新しい見方考えたかが台頭し、また、時代とともに、新たな見方考え方が台頭する健全な社会体制が維持されているのでしょう。

一方、日本においては、民主党が極端に走ったため、また、社会的合意体制が出来ていないのに、一歩的理念を押し付け、強行しようとしたため、国民の共感を失ってしまいました。

連合でさえ、自公と連携体制を取りたいような状況であり、全てが与党になりたい状況は、また、今まで来た道を逆戻りするようであり、米国との違いを如実に実感しています。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
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『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

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